会長 苅部治紀
日本トンボ学会は創立からまもなく70年を迎える歴史ある学会ですが、会員は在野の研究者を主体にしており、トンボ好きが集まって、分類、生態、保全などそれぞれが興味を持つ分野の研究を深め、その成果は学会誌TOMBOで毎年多岐に渡る分野の論文が発表されています。
学会にもいろいろな性格のものがありますが、多様性が重視される中で、トンボ学会は、在野の研究者が中心である特質を活かした、堅苦しくなく、自由に楽しく研究を展開できる学会だと自負しています。
トンボは、童謡「赤とんぼ」に代表されるように日本人にとって心象風景の代表ともいえる大変身近な昆虫です。「空を飛ぶ」ということに特化した体を持ち、昆虫としては大型で観察も容易な特徴があることから、進化や生態の研究も盛んです。
一方、トンボはいまや「身近な昆虫」ではなくなってきており、湿地や池沼の破壊、農薬汚染などの自然破壊によって、多くの種が危機的状況にあります。さらに近年の気候変動に伴う急速な温暖化影響も危惧されています。
当学会は早期から自然保護委員会を設立し、絶滅危惧種の現況把握を継続しています。得られた随時の科学的データによる環境省レッドリストの更新に貢献を続けており、開発行為に対する学会要望書による抑止など社会実装にも力を入れてきています。また、各地の会員が、絶滅危惧生息地の実践的な保全に携わって成果を挙げていることは特筆すべきことでしょう。
当学会HPは長期に渡る休止が続いてしまいましたが、この春から再開します。油断はできないものの新型コロナの行動制限も解除され、学会大会も対面が再開でき、懇親の場も戻ってきました。
調査も従前のように展開できるようになってきたと感じます。会員の皆さんとともに、活動の再始動をしっかり進めたいと思います。
また、このHPをご覧になり当学会の活動に興味をもたれた方は、ぜひ仲間に加わり活動いただきたいと思います。
2024年3月 苅部治紀